
2024年5月17日に発売されたSHUREのダイナミックマイク Nexadyne 8(NXN8)。
革新的な技術を搭載し、プロのボーカリストがライブパフォーマンスに使用するのに適した、高性能なダイナミックマイクです。
Nexadyne 8のおすすめポイントは以下の通りです。
- SHURE独自のRevonicデュアルエンジンテクノロジーで不要な振動やノイズを最小限に抑制
- ミックスの中でも際立つクリアなサウンドを実現
- EQなどの補正処理をせずとも、ボーカルのパフォーマンスを正確に再現
- ハンドリングノイズを大幅に低減する優れた設計
- ハウリングに強く、音量を上げても安定した音質
本記事では、音のプロであるヒビノスタッフが、Nexadyne 8を実際に使用した所感を詳しくレビューします。
SHURE【Nexadyne 8】の特長

Nexadyne 8は、世界的に有名なマイクメーカー SHUREのボーカル用ダイナミックマイクです。
SHUREが独自に開発し特許を取得したRevonicデュアルエンジンテクノロジーを搭載し、2つのトランスデューサーが振動やノイズを相互に打ち消し合うことで、収音軸外の不要な音声信号を排除。

最新技術を駆使した音声信号処理で、クリアで忠実なボーカルサウンドを実現しています。
外装には堅牢なダイキャストアルミを採用し、光沢を抑えたブラックの塗装仕上げ。ライブステージなどのハードな使用環境にも耐えうる、信頼性の高い作りです。
Nexadyne 8は、カーディオイドタイプの8/Cと、スーパーカーディオイドタイプの8/Sの2種類をラインナップしており、使用環境や用途に応じて最適な指向性を選択できます。

■Nexadyne 8/C(カーディオイド) ※製品名 NXN8/C-J
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイプ | ダイナミック型(ムービングコイル方式) |
| 指向特性 | カーディオイド(単一指向性) |
| 周波数特性 | 50~20,000 Hz |
| 出力インピーダンス | 300Ω |
| 感度 | -54.0 dBV/Pa (2.00mV) 1Pa = 94dB SPL |
| 質量 | 258g |
| コネクター | プロオーディオ用3ピン(XLR)、オス |
| 外装仕様 | ブラック塗装のダイキャストアルミ製 |
■Nexadyne 8/S(スーパーカーディオイド) ※製品名 NXN8/S-J
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイプ | ダイナミック型(ムービングコイル方式) |
| 指向特性 | スーパーカーディオイド(超指向性) |
| 周波数特性 | 50~20,000 Hz |
| 出力インピーダンス | 450Ω |
| 感度 | -51.0 dBV/Pa (2.81 mV) 1Pa = 94 dB SPL |
| 質量 | 294g |
| コネクター | プロオーディオ用3ピン(XLR)、オス |
| 外装仕様 | ブラック塗装のダイキャストアルミ製 |
SHURE【Nexadyne 8】のパッケージ

Nexadyne 8は、しっかりとしたダンボール製の外箱に梱包されています。
箱を開けると、取扱説明書とマイク本体を収納したジッパーケースが入っています。

ジッパーケースは、マイク本体とマイクホルダーをセットで収納できるようになっており、コンパクトで携帯性に優れています。

SHURE SM58などに付属するマイクポーチと比べると、外部からの衝撃にも強い作りになっているので、外に持ち歩く際も安心です。
付属のマイクホルダーには、3/8インチ-5/8インチ変換ねじが付属しており、様々なマイクスタンドに対応できるようになっています。


付属品の品質も高く、必要なものは揃っています。
SHURE【Nexadyne 8】の外観

Nexadyne 8の外装は、ダイキャストアルミ製でブラック塗装が施されています。
手に取った瞬間、その頑強な作りが伝わってきます。落下や衝撃にも強く、ハードな現場でも安心して使用できる耐久性を備えています。
グリル部分は、へこみに強い硬化鋼製グリルを採用しており、こちらもハードな現場で安心して使える耐久性の高い仕様になっています。

ボディ部分は、程よい太さで手に吸い付くような感触があり、長時間のパフォーマンスでも疲れにくい設計です。
表面の仕上げも高級感があり、プロフェッショナル向けマイクとしての風格を感じさせます。
SHURE【Nexadyne 8】の大きさ・重量

Nexadyne 8は、定番のSHURE SM58と比較して、やや大きめのサイズです。
一方で、重量についてはNexadyne 8/Cが258g、Nexadyne 8/Sが294gとなっており、いずれもSM58(298g)より軽量となっています。
グリップ部分が手に吸い付くような感触で持ちやすく、ハンドリングノイズも混入しにくいため、ハンドマイクとしての使い勝手はとても良いです。
ステージでの取り回しも楽で、激しいパフォーマンスにも対応できる設計となっています。
SHURE【Nexadyne 8】ボーカルマイク
SHURE【Nexadyne 8】をレビュー

ここからは、Nexadyne 8を実際に使用した所感をレビューします。
レビューに際しては、「SM58」「BETA58A」「KSM 8」の3本との違いを、自宅でのレコーディングとスタジオでのバンドサウンドの中で検証しました。

本章では、音質や使い勝手について詳しく解説します。
クリアで抜けの良いサウンド

Nexadyne 8は、クリアで抜けの良いサウンドが特長です。
SM58やBETA 58Aと録り比べてみると、Nexadyne 8は低音域のふくらみが抑制されており、非常にスッキリとした聴きやすいサウンドになっています。
(参考)スペック比較表
| モデル | Nexadyne 8/C | SM58 | BETA 58A |
|---|---|---|---|
| 周波数特性 | 50-20,000Hz | 50-15,000Hz | 50-16,000Hz |
| 感度 | -54.0 dBV/Pa | -54.5 dBV/Pa | -51.5 dBV/Pa |
| 重量 | 258g | 298g | 278g |
| 指向性 | カーディオイド | カーディオイド | スーパーカーディオイド |
加えて、低音域から高音域まで音の動きが滑らかで、コンデンサーマイクのように繊細なニュアンスまで正確に再現します。
ボーカルの声が明瞭で前に出やすいため、ささやくように声量を抑えて歌うようなパートでも、声の輪郭がわかりやすく、感情表現のニュアンスがつけやすく感じました。
これにより、ダイナミクスの緩急もつけやすくなり、表現力豊かなパフォーマンスが可能になります。
そして、特筆すべきは近接効果のコントロールです。
【近接効果】マイクを音源に近づけるほど、低域の感度が増加する現象
SM58やBETA 58Aと比較すると、マイクを近づけて歌っても近接効果による低音の膨らみが抑制されており、EQやコンプレッサーでの調整を行わずともバランスの取れたサウンドに仕上がっています。

バンドサウンドでは、そのままの出音でも埋もれずにボーカルが前に出るため、全体の音量バランスも調整しやすく感じました。
続いて、KSM 8ともサウンドを比較してみましょう。

KSM 8は、ダイナミックマイクとしては珍しいデュアルダイアフラムを採用した製品です。近接効果を大幅に低減し、スタジオクオリティの極めて自然な収音を可能とします。
KSM 8とNexadyne 8を録り比べてみると、どちらも近接効果は抑制されており、低音域がふくらむことなくスッキリとした聴き取りやすいサウンドです。
その中で、KSM 8は中音域の存在感が際立っており、SHUREらしい力強いサウンドに感じました。
Nexadyne 8は、低域から高域までなめらかにつながっており、聴き心地がよいサウンドです。
KSM 8は、業界スタンダードであるSHUREの伝統的なサウンドを磨き上げたものであり、Nexadyne 8はこれまでのSHUREのサウンドとは異なる、「最新の音楽に最適化したサウンド」と言う印象を受けました。
ハウリング耐性も良好

バンドサウンドでの検証では、Nexadyne 8はSM58やBETA 58Aと比べて、音量を上げてもハウリングに強い傾向がみられました。
これは、Revonicデュアルエンジンテクノロジーにより、収音軸外の不要な音声信号を排除できていることが大きいのではないかと思います。
ステージはもちろん、自宅のレコーディングでもハンドリングノイズが気になることはなかったので、Revonicデュアルエンジンテクノロジーによるノイズの抑制効果は素晴らしいです。
Nexadyne 8はどんな用途に向いている?
ここまでレビューした内容を踏まえると、Nexadyne 8は以下のような用途に適しています。
適している用途
ボーカルやスピーチの用途であれば万能に使えるマイクですが、その中でもボーカリストがライブパフォーマンスやレコーディングで使用するのに適しています。
Revonicデュアルエンジンテクノロジーによって、不要な音が排除されたクリアで抜けの良いサウンドは、バンドサウンドの中でも埋もれることなく、ボーカルのパフォーマンスを正確に再現してくれます。
これまでのダイナミックマイクとは一線を画すマイクであると感じました。
一方で、トークイベントやライブ配信での利用であれば、SM58で十分です。
Nexadyne 8は、SM58と比較すると価格が3倍近くするため、ライブパフォーマンスで使わない方にはやや割高感があります。今回のレビューでも、改めてSM58のコストパフォーマンスのすごさを感じました。
しかし、ボーカルのライブパフォーマンスにおいては、Nexadyne 8は確実に価格に見合った価値のある製品と言えます。プロのボーカリストや、音質にこだわるミュージシャンには、ぜひ使ってみてほしいマイクです。
SHURE【Nexadyne 8】ボーカルマイク
SHURE【Nexadyne 8】まとめ

今回は、SHUREのボーカル向けダイナミックマイク Nexadyne 8をレビューしました。
改めて、Nexadyne 8のおすすめポイントをまとめると以下の通りです。
- SHURE独自のRevonicデュアルエンジンテクノロジーで不要な振動やノイズを最小限に抑制
- ミックスの中でも際立つクリアなサウンドを実現
- EQなどの補正処理をせずとも、ボーカルのパフォーマンスを正確に再現
- ハンドリングノイズを大幅に低減する優れた設計
- ハウリングに強く、音量を上げても安定した音質
革新的なRevonicデュアルエンジンテクノロジーにより、従来のダイナミックマイクの常識を覆す、クリアで存在感のあるサウンドを実現したNexadyne 8。
プロのボーカリストがステージで最高のパフォーマンスを発揮するために必要な要素を備えた、まさに次世代のボーカルマイクロフォンと言えるでしょう。






